第二十七章 戦慄と格差、揺れる炎
Maple Strategy 27 chapter
―ビクトリア大陸ペリオン「シャレオン王墓中部」―
カッコッカッ…
重い足音、一歩一歩が邪気を放つように暗い影が薄暗い王墓内歩き、長い廊下に出る
廊下を進むのは、長身の男。すれ違うもの全てが立ち止まって一歩下がり、深々と頭を下げる。中には方膝をついて敬意を示すものもいる。そうする者の大半は弓使いの契約者だ
エヴァーグリーンの目を正面に携え、周りを気にも留めず廊下を進む契約者
「神速の射手」ヴァルクド・ベガ
カッ
廊下を中ほどまで進んだところで足を止め、とある一室へと入る
書斎めいた部屋にいた輝くような「蒼」の目を持った男はヴァルクドの姿を視認するとすぐに席を立ち、頭を下げる
ヴ「久方ぶりだな「妖帝の蒼牙」サザンロック・D(ドラクル)・ベルガモッド」
サ「こちらこそ。「魔弾の射手」ヴァルクド・F(フロンティア)ベガ殿」
ヴ「ほう、英煉名どころかそっちの名前をまだ覚えている者がいたとは。旧知というのは持つものだな」
サ「最後に会ったのが「大戦」のときでしたから、120年ぶりといったところですかな」
ヴ「120年か。早いものだな」
サ「時代の流れは泡沫の泡…と申します。新しい「神速」の称号は如何です?」
ヴ「ふん、ただ早いだけでは何の自慢にもならんわ。「神速」の称号はアスラにこそ相応しい。そちらこそ、紅月時のヴァンパイヤっぷりはどうなのだ?真祖のD(ドラクル)」
サ「そちらは生まれ持ってきたものなので相変わらずです」
ヴ「ふん、まあよい」
サ「は」
ヴ「無駄話をしにきたわけでもないし、本題に入る。・・・?そういえば主催者はどうされたのだ?こちらへ来ていると聞いていたのだが」
サ「それが、「バルログの様子が心配だから帰る」と一通り視察を終えられて本拠地のほうへ辞されました」
ヴ「せっかちな方だな…ふむ、頼んでおいたものは?」
サ「こちらです」
サザンロックが机の下のアタッシュケースに手を伸ばし、ロックを解除する
中に収められていたものは鞘に入った一本の短刀
ヴ「大儀。では早速はじめるとするか」
サ「しかし、本当に独断で炎の揺らぎの支部などを攻撃してしまってよろしいのですか?」
ヴ「構わん。どうせそろそろこうなるしな」
サ「こうなる…?」
ヴ「なんでもない、始めるぞ」
サ「は、して何処の支部を標的にされるので?」
ヴ「何処、といってもまだ2つしかわかっていないのだがな。ふむ…ではルダスレークの方を狙ってみるか」
サ「承知、事が済みましたら御報告願います」
ヴ「応」
ヴァルクドが自身の弓に短刀をつがえる。鞘から出した抜き身の短刀は邪悪に揺れる深緑の炎に包まれ、妖しい光を放っている
ヴ「さあ、地獄のグランギニョル第一幕の始まりだ。せいぜい頑張ることだな、ゴミ屑共」
弓の弦をはなす。遠心力を得て弦は元の位置に戻り、ビィィンとしなる音が鳴る
そこに、短刀の姿はなかった
ヴ「行け、我が宝具「切斬桐霧―サーティライトスライサー」
ヴァルクドが、邪悪に笑った
―ルダスレーク大陸、住宅街―
おもちゃの町として今では一般的に知られているルディブリオムは、約200年前に冒険を強く欲す魂の王で有名な「探求王」ラクスフォリア・I(イサベル)・プリンによって発見された。町の中央には大きな時計塔を構えたこの町では上層に魔導体(チャックマやイオリス等)、下層にはアストラル、不死体(マリオネットやウォッチなど)が多数存在し、倒しても倒してもどこからともなく沸いて出るという異常事態を抱えている(おそらくは歪んだ時空のせいだといわれている)
そんなルディブリオムに「炎の揺らぎ」はビクトリアの次に早く支部を置き、契約者を配備していた(現在炎の揺らぎはルディブリオム・オルビス・リプレ・ビクトリア・エルナスに支部を置き、オシリアを本営としている。これらは全て三王のトップピエトロの采配であり、弩兵はただマスターという肩書きを持つだけである)
ルディブリオムにおかれた支部は本町とエオス塔の中間にある住宅街の空家(という名義)にあり、空間拡張の「永久陣」が密かに敷かれ、本来の家の約20倍の土地坪を有している
ここを任されている王は他でもなく「三王」直属の補佐機関「五冠」の一人である「神の鎮魂歌」リグロム・Q(クィリア)・ワイナリーで、五冠の中で唯一「戦わない」王として有名である
というのもリグロムは攻撃の術を職によるスキルしか持たず、その分の余力を全て守りの術に回しており、守りだけなら王の中でも五指にガいるほどの技術力だった
そう、「だった」のだ
そのリグロムは今支部長室で一人の契約者と話している
王A「リグロム殿」
リ「どうした?」
A「時計塔監視隊の法から報告です。なんでもバイキングが曲がった時間から流出しているとの事。今はまだ少数ですが、放置しておくと肥大化するやもしれません」
リ「またか…バイキングの奴等は血の気が多くて困る…わかった、明日「封魔壁」を張りに行く。ポータルに入れないと知れば連中も諦めるだろう」
A「お願いします」
頭を下げ、出て行こうとする
リ「ああ待て」
A「?」
リ「何か嫌な感じがしないか?」
A「は?いえ、何も」
リ「ふ・・・む」
A「?」
リ「いやなんでもない。下がれ」
A「は」
バタム
ピルルルルル ピルルルル
リ「はい支部長室」
アルドエル(以下ア、ちなみに脇キャラ)「書庫室のアルドエルです。例の件の報告をお願いできますか」
リ「ああ、あれね。うむわかった、ピエトロ殿には私から伝えておく」
ア「?お疲れのようですね」
リ「ん?ああ、またバイキングが流出してるそうでな。全く、これでは過労でそのうちくたばるやも知れんわ」
ア「はは、五冠である貴方が弱音を吐かれましては、部下の士気にも影響しますよ」
リ「まあな…ところで、お前にも聞きたいことがあるんだが」
ア「?何でしょう」
リ「さっきからやけに嫌な気配を感じるんだが、お前はどうだ?」
ア「嫌な気配?いえこちらは異常――」
ブツッ
リ「?もしもし?」
唐突に、電話が切れる
リ「?」
受話器を置いて廊下に出てみる
そこへ――
一筋の深緑の炎が、廊下を一直線に駆け抜けた
リ「!?」
そして
ズドスッ!!!
「がっ!?」
リグロムのすぐそばを歩いていた構成員が苦痛の声を漏らして倒れたのだ
リ「な・・・・・ッ!?」
次の瞬間
ヴォン!!
陣の発動音と共に
廊下という廊下、壁という壁、天井という天井に
支部にいた手だれの契約者が気づかぬ静かさで
かつ全てを打ち砕く強大さで
そして最強の動体視力を持つリグロムですら目で追えない速さで
邪悪に輝く「深緑」の無数の陣が展開し、数百万という短刀を、白昼堂々支部のド真ん中に召喚した
ズバァァッ!!!
ほぼ全ての場所から数えられぬほどの短刀が飛び出す。少し前まで「支部」としての役割を持っていたこの施設はたった数秒で虐殺の地獄絵図を創り出し、阿鼻叫喚の世界が形成された
「ぐわっ!!」
「ぎゃああ!!」
「きゃあっ!!」
避けようとする者、はじこうとする者、逃げようとする者、その全てが圧倒的質量に飲み込まれ、倒れていく
そのとき、リグロムに向けて万という数の短刀が迫った。守りの陣、式を多数持つリグロムはコレを迎え撃つべく外界との空間を切り離すことで自身を守る防御陣「封間壁」を展開し、さらにもう一枚呼びシールドを張る
この間0.7秒
万全の備えのはずだった
そう、「だった」のだ
そんなリグロムを嘲笑うかのように短刀は「封間壁」を易々と叩き割り、紙を突くような軽さで
簡単にもう一枚のシールドを破った
リ「っ!?」
防御壁を破られたリグロムは狼狽しつつも次の陣を発動されようとする。しかし、もう遅い
荒れ狂う深緑の短刀がリグロムの体に突き刺さる
そしてその内の一本が、正確に、確実に王の核「カーン」を打ち抜いた
ボッ!!
リグロムの体が粉のように分解され、粒子となって消えていく
後に残るのは、累々と積み重なった屍と、原形をとどめない支部の無残な姿だった
あまりにも、あまりにもあっけない、「五冠」の一角の消滅だった
ヴ「・・・終わったな」
ヴァルクドが目を開ける
サ「終わりましたか」
ヴ「うむ」
サ「生存者は?」
ヴ「0だ」
サ「おお怖い怖い、流石はヴァルクド殿が誇る自身最強の宝具、凄まじい力ですね」
ヴ「流石の「守る王」といえど、「障壁無効化、防御陣無力化」には倒れたようだな」
サ「まさにうってつけの宝具、というわけですね」
ヴ「はっ、しかし威力だけならお前の大爆発にはかなわんさ」
サ「もったいないお言葉…にしても、五冠とやらも存外に脆いものですな」
ヴ「めっぽう強いが、連続しようが不可能なところがコイツの弱点だな」
サ「そのようですな。さて、そろそろ始めてもよろしいでしょうか」
ヴ「ああ、証拠とか、その他色々吹き飛ばすくらいでかいの頼むよ」
サ「承知、では・・・」
シャッ、と全てのカーテンが開けられ、月光がにわかに差し込む
ペリオン山脈の中腹に位置するシャオレン王墓。緩やかな斜面の先にはペリオンが、真南にはうっすらとエリニアの灯が瞬いている
そして今日の月は、この世界特有の赤い月
紅月――
サザンロックが月を見上げる
瞬間、周りの空気が膨張したかの用に思えて、サザンロック「本来」の姿が確立していく
サファイヤのようだった「蒼」の目は今や鋭きルビーのような「紅」に変わっており、髪がざわざわと揺れる
ヴ「何が怖い怖い、だ。こっちのほうがよっぽど恐ろしいわ」
サザンロックがくるりと振り返り、求めるような眼光をヴァルクドに浴びせる
ふぅ、と短く溜息をついて、右腕を前へやる
そこへ――
サザンロックが噛み付いた
ごくっ、ごくっ、と神経に触るような音がする
傷口から血と共に深緑の炎がはらはらと散る、それがサザンロックの紅色の炎と結びついて―
ヴォン!
一つの陣を確立させた
そこですかさずサザンロックが陣の中心に手を当て、短く「ルダスレーク」と呟いた
刹那、紅の一条の光が迸り、夜空の彼方へと消えた
…ポ
ポポポ
ポポポポ
ポポポポポポポ…
地獄絵図と化した支部には無数に散らばり突き刺さる短刀と血の海、倒れる人、散らばった書類、無残に破壊された窓、ドア、扉、椅子などがばらばらになっており、人の気配は皆無だ
その無数に散らばる短刀が、丸く小さい光を帯びて光り始めたのだ
ゆらゆらとぼやけるように揺れる深緑に
蛍の光のように、光輝く
そのとき、漆黒の夜空から一条の光が支部に差し込んだ
その光は邪悪な紅に輝き、地に着くと同時に、陣を発動させる
次の瞬間
今まで儚く揺れていた深緑の光がどろどろした紅に塗り替えられる
陣は無数の呪線を出し、それが一本一本短刀に絡み付いていく
そして――
ドッ――――――――――!!!!!!!
全てが、爆発した
並の爆発ではない、周囲の民家数軒を根こそぎ飲み込んだ、深紅の大爆発
燃える書類が宙を舞い、倒れる人を焼き、壁を吹き飛ばし、ありとあらゆるものを飲み込み、支配し、そして、破壊した
今ここに、避けられない事実の傷跡が残された
ルディブリオム支部が、壊滅した
地獄のグランギニョル、第一幕が上がったのだ
浄化です、受験も一通り落ち着いたということで自分で書いてみました。本当はエイエンニ〜(以下略)の後編を書こうかと思っていたんですが、「最近オマケみたいな章ばっかで本編進んでなくね?」と言うメールをいただいていたので、それならば先にこっちをとwえ?いやいやエイエンニ(以下略)の後編が余りにも長すぎてダルくなってやめたとかじゃないですヨ?もうすぐ春を迎えます、迎春ですよ、げいしゅん。何かまた新しいことにも挑戦してみようカナとか思う浄化、これからもささやかに応援してやってください
え?新しいことはじめる前に弩兵を120にしろ?
え、何?そんなことしてる暇があるなら勉強しろ?
フハハ
もっともだ、もっともだ
じゃ、そういうことで!
日本橋行ってきます勉強します
P.S今日パッチみたいなのでSSは後日
リンク追加、xx弓ゼルxxさんのサイトです^^
―ビクトリア大陸ペリオン「シャレオン王墓中部」―
カッコッカッ…
重い足音、一歩一歩が邪気を放つように暗い影が薄暗い王墓内歩き、長い廊下に出る
廊下を進むのは、長身の男。すれ違うもの全てが立ち止まって一歩下がり、深々と頭を下げる。中には方膝をついて敬意を示すものもいる。そうする者の大半は弓使いの契約者だ
エヴァーグリーンの目を正面に携え、周りを気にも留めず廊下を進む契約者
「神速の射手」ヴァルクド・ベガ
カッ
廊下を中ほどまで進んだところで足を止め、とある一室へと入る
書斎めいた部屋にいた輝くような「蒼」の目を持った男はヴァルクドの姿を視認するとすぐに席を立ち、頭を下げる
ヴ「久方ぶりだな「妖帝の蒼牙」サザンロック・D(ドラクル)・ベルガモッド」
サ「こちらこそ。「魔弾の射手」ヴァルクド・F(フロンティア)ベガ殿」
ヴ「ほう、英煉名どころかそっちの名前をまだ覚えている者がいたとは。旧知というのは持つものだな」
サ「最後に会ったのが「大戦」のときでしたから、120年ぶりといったところですかな」
ヴ「120年か。早いものだな」
サ「時代の流れは泡沫の泡…と申します。新しい「神速」の称号は如何です?」
ヴ「ふん、ただ早いだけでは何の自慢にもならんわ。「神速」の称号はアスラにこそ相応しい。そちらこそ、紅月時のヴァンパイヤっぷりはどうなのだ?真祖のD(ドラクル)」
サ「そちらは生まれ持ってきたものなので相変わらずです」
ヴ「ふん、まあよい」
サ「は」
ヴ「無駄話をしにきたわけでもないし、本題に入る。・・・?そういえば主催者はどうされたのだ?こちらへ来ていると聞いていたのだが」
サ「それが、「バルログの様子が心配だから帰る」と一通り視察を終えられて本拠地のほうへ辞されました」
ヴ「せっかちな方だな…ふむ、頼んでおいたものは?」
サ「こちらです」
サザンロックが机の下のアタッシュケースに手を伸ばし、ロックを解除する
中に収められていたものは鞘に入った一本の短刀
ヴ「大儀。では早速はじめるとするか」
サ「しかし、本当に独断で炎の揺らぎの支部などを攻撃してしまってよろしいのですか?」
ヴ「構わん。どうせそろそろこうなるしな」
サ「こうなる…?」
ヴ「なんでもない、始めるぞ」
サ「は、して何処の支部を標的にされるので?」
ヴ「何処、といってもまだ2つしかわかっていないのだがな。ふむ…ではルダスレークの方を狙ってみるか」
サ「承知、事が済みましたら御報告願います」
ヴ「応」
ヴァルクドが自身の弓に短刀をつがえる。鞘から出した抜き身の短刀は邪悪に揺れる深緑の炎に包まれ、妖しい光を放っている
ヴ「さあ、地獄のグランギニョル第一幕の始まりだ。せいぜい頑張ることだな、ゴミ屑共」
弓の弦をはなす。遠心力を得て弦は元の位置に戻り、ビィィンとしなる音が鳴る
そこに、短刀の姿はなかった
ヴ「行け、我が宝具「切斬桐霧―サーティライトスライサー」
ヴァルクドが、邪悪に笑った
―ルダスレーク大陸、住宅街―
おもちゃの町として今では一般的に知られているルディブリオムは、約200年前に冒険を強く欲す魂の王で有名な「探求王」ラクスフォリア・I(イサベル)・プリンによって発見された。町の中央には大きな時計塔を構えたこの町では上層に魔導体(チャックマやイオリス等)、下層にはアストラル、不死体(マリオネットやウォッチなど)が多数存在し、倒しても倒してもどこからともなく沸いて出るという異常事態を抱えている(おそらくは歪んだ時空のせいだといわれている)
そんなルディブリオムに「炎の揺らぎ」はビクトリアの次に早く支部を置き、契約者を配備していた(現在炎の揺らぎはルディブリオム・オルビス・リプレ・ビクトリア・エルナスに支部を置き、オシリアを本営としている。これらは全て三王のトップピエトロの采配であり、弩兵はただマスターという肩書きを持つだけである)
ルディブリオムにおかれた支部は本町とエオス塔の中間にある住宅街の空家(という名義)にあり、空間拡張の「永久陣」が密かに敷かれ、本来の家の約20倍の土地坪を有している
ここを任されている王は他でもなく「三王」直属の補佐機関「五冠」の一人である「神の鎮魂歌」リグロム・Q(クィリア)・ワイナリーで、五冠の中で唯一「戦わない」王として有名である
というのもリグロムは攻撃の術を職によるスキルしか持たず、その分の余力を全て守りの術に回しており、守りだけなら王の中でも五指にガいるほどの技術力だった
そう、「だった」のだ
そのリグロムは今支部長室で一人の契約者と話している
王A「リグロム殿」
リ「どうした?」
A「時計塔監視隊の法から報告です。なんでもバイキングが曲がった時間から流出しているとの事。今はまだ少数ですが、放置しておくと肥大化するやもしれません」
リ「またか…バイキングの奴等は血の気が多くて困る…わかった、明日「封魔壁」を張りに行く。ポータルに入れないと知れば連中も諦めるだろう」
A「お願いします」
頭を下げ、出て行こうとする
リ「ああ待て」
A「?」
リ「何か嫌な感じがしないか?」
A「は?いえ、何も」
リ「ふ・・・む」
A「?」
リ「いやなんでもない。下がれ」
A「は」
バタム
ピルルルルル ピルルルル
リ「はい支部長室」
アルドエル(以下ア、ちなみに脇キャラ)「書庫室のアルドエルです。例の件の報告をお願いできますか」
リ「ああ、あれね。うむわかった、ピエトロ殿には私から伝えておく」
ア「?お疲れのようですね」
リ「ん?ああ、またバイキングが流出してるそうでな。全く、これでは過労でそのうちくたばるやも知れんわ」
ア「はは、五冠である貴方が弱音を吐かれましては、部下の士気にも影響しますよ」
リ「まあな…ところで、お前にも聞きたいことがあるんだが」
ア「?何でしょう」
リ「さっきからやけに嫌な気配を感じるんだが、お前はどうだ?」
ア「嫌な気配?いえこちらは異常――」
ブツッ
リ「?もしもし?」
唐突に、電話が切れる
リ「?」
受話器を置いて廊下に出てみる
そこへ――
一筋の深緑の炎が、廊下を一直線に駆け抜けた
リ「!?」
そして
ズドスッ!!!
「がっ!?」
リグロムのすぐそばを歩いていた構成員が苦痛の声を漏らして倒れたのだ
リ「な・・・・・ッ!?」
次の瞬間
ヴォン!!
陣の発動音と共に
廊下という廊下、壁という壁、天井という天井に
支部にいた手だれの契約者が気づかぬ静かさで
かつ全てを打ち砕く強大さで
そして最強の動体視力を持つリグロムですら目で追えない速さで
邪悪に輝く「深緑」の無数の陣が展開し、数百万という短刀を、白昼堂々支部のド真ん中に召喚した
ズバァァッ!!!
ほぼ全ての場所から数えられぬほどの短刀が飛び出す。少し前まで「支部」としての役割を持っていたこの施設はたった数秒で虐殺の地獄絵図を創り出し、阿鼻叫喚の世界が形成された
「ぐわっ!!」
「ぎゃああ!!」
「きゃあっ!!」
避けようとする者、はじこうとする者、逃げようとする者、その全てが圧倒的質量に飲み込まれ、倒れていく
そのとき、リグロムに向けて万という数の短刀が迫った。守りの陣、式を多数持つリグロムはコレを迎え撃つべく外界との空間を切り離すことで自身を守る防御陣「封間壁」を展開し、さらにもう一枚呼びシールドを張る
この間0.7秒
万全の備えのはずだった
そう、「だった」のだ
そんなリグロムを嘲笑うかのように短刀は「封間壁」を易々と叩き割り、紙を突くような軽さで
簡単にもう一枚のシールドを破った
リ「っ!?」
防御壁を破られたリグロムは狼狽しつつも次の陣を発動されようとする。しかし、もう遅い
荒れ狂う深緑の短刀がリグロムの体に突き刺さる
そしてその内の一本が、正確に、確実に王の核「カーン」を打ち抜いた
ボッ!!
リグロムの体が粉のように分解され、粒子となって消えていく
後に残るのは、累々と積み重なった屍と、原形をとどめない支部の無残な姿だった
あまりにも、あまりにもあっけない、「五冠」の一角の消滅だった
ヴ「・・・終わったな」
ヴァルクドが目を開ける
サ「終わりましたか」
ヴ「うむ」
サ「生存者は?」
ヴ「0だ」
サ「おお怖い怖い、流石はヴァルクド殿が誇る自身最強の宝具、凄まじい力ですね」
ヴ「流石の「守る王」といえど、「障壁無効化、防御陣無力化」には倒れたようだな」
サ「まさにうってつけの宝具、というわけですね」
ヴ「はっ、しかし威力だけならお前の大爆発にはかなわんさ」
サ「もったいないお言葉…にしても、五冠とやらも存外に脆いものですな」
ヴ「めっぽう強いが、連続しようが不可能なところがコイツの弱点だな」
サ「そのようですな。さて、そろそろ始めてもよろしいでしょうか」
ヴ「ああ、証拠とか、その他色々吹き飛ばすくらいでかいの頼むよ」
サ「承知、では・・・」
シャッ、と全てのカーテンが開けられ、月光がにわかに差し込む
ペリオン山脈の中腹に位置するシャオレン王墓。緩やかな斜面の先にはペリオンが、真南にはうっすらとエリニアの灯が瞬いている
そして今日の月は、この世界特有の赤い月
紅月――
サザンロックが月を見上げる
瞬間、周りの空気が膨張したかの用に思えて、サザンロック「本来」の姿が確立していく
サファイヤのようだった「蒼」の目は今や鋭きルビーのような「紅」に変わっており、髪がざわざわと揺れる
ヴ「何が怖い怖い、だ。こっちのほうがよっぽど恐ろしいわ」
サザンロックがくるりと振り返り、求めるような眼光をヴァルクドに浴びせる
ふぅ、と短く溜息をついて、右腕を前へやる
そこへ――
サザンロックが噛み付いた
ごくっ、ごくっ、と神経に触るような音がする
傷口から血と共に深緑の炎がはらはらと散る、それがサザンロックの紅色の炎と結びついて―
ヴォン!
一つの陣を確立させた
そこですかさずサザンロックが陣の中心に手を当て、短く「ルダスレーク」と呟いた
刹那、紅の一条の光が迸り、夜空の彼方へと消えた
…ポ
ポポポ
ポポポポ
ポポポポポポポ…
地獄絵図と化した支部には無数に散らばり突き刺さる短刀と血の海、倒れる人、散らばった書類、無残に破壊された窓、ドア、扉、椅子などがばらばらになっており、人の気配は皆無だ
その無数に散らばる短刀が、丸く小さい光を帯びて光り始めたのだ
ゆらゆらとぼやけるように揺れる深緑に
蛍の光のように、光輝く
そのとき、漆黒の夜空から一条の光が支部に差し込んだ
その光は邪悪な紅に輝き、地に着くと同時に、陣を発動させる
次の瞬間
今まで儚く揺れていた深緑の光がどろどろした紅に塗り替えられる
陣は無数の呪線を出し、それが一本一本短刀に絡み付いていく
そして――
ドッ――――――――――!!!!!!!
全てが、爆発した
並の爆発ではない、周囲の民家数軒を根こそぎ飲み込んだ、深紅の大爆発
燃える書類が宙を舞い、倒れる人を焼き、壁を吹き飛ばし、ありとあらゆるものを飲み込み、支配し、そして、破壊した
今ここに、避けられない事実の傷跡が残された
ルディブリオム支部が、壊滅した
地獄のグランギニョル、第一幕が上がったのだ
浄化です、受験も一通り落ち着いたということで自分で書いてみました。本当はエイエンニ〜(以下略)の後編を書こうかと思っていたんですが、「最近オマケみたいな章ばっかで本編進んでなくね?」と言うメールをいただいていたので、それならば先にこっちをとw
え?新しいことはじめる前に弩兵を120にしろ?
え、何?そんなことしてる暇があるなら勉強しろ?
フハハ
もっともだ、もっともだ
じゃ、そういうことで!
P.S今日パッチみたいなのでSSは後日
リンク追加、xx弓ゼルxxさんのサイトです^^




