2008年01月07日 [15:54] Main chapter 

第二十六章 エイエンニニジノカナタニヒカルソウキュウノヒトミ(前編)

Maple Strategy 26 chapter







―ルディブリオム 時計塔の奥―

そこに居るは、一人の男と、一人の女

彼らは永遠に生きるものであり、また永遠に変わらぬものたちである。

彼らがいるのは、1つの空間

小さな小さな空間である

中央には魔方陣。部屋の6割に展開する大きな魔方陣

男が何か言い、女がそれを紡ぐ。

永遠に、紡ぐ

見上げると、空は漆黒で

見下ろせば、真っ白い世界が其処に広がっている

その世界の下で

薄花桜色に光る炎を持つもの

いつまでも

いつまでも

言葉を紡いでいる

これは、薄花桜色の炎を纏う、一人の男と、女の話




・・・

・・・・・・

ス「―彼方より来たりて我を包み、虚空より空へと巻き返せ」

ア「From Kanata forth in our package to the thin air from the air and sky word」

ス「―我に従え炎の化身。匿に隠れて待ち、匿に出て裂き回れ」

ア「I follow the flames personified. Putting hidden waiting, finger on the split rear」

ヴォン!

不可解な音が部屋中に響いては反響し、部屋の6割に展開していた薄花桜色の魔方陣がが6本の光を帯びて散会し、ペンタクルの紋様を床に刻んでいく

ア「ふぅ。ま、今日はこんなところか」

ス「ずいぶん長い間詠唱してたもんねぇ」

ア「これであいつらがどんなのを使っても瞬時に対応できるわね」

ス「んー、どうかな。何してくるのかわからないのがやつらの売りだし…」


ス「っ…悪い、アルフィナ」

ア「どしたの?」

ス「詠唱に時間を費やしすぎて、眠い…」

ア「じゃあ3日位したら起こしたげるわw」

ス「頼む…ぐー」

ア「あれま早いことw」

















スティル・ガーフィドは魔法使いの町エリニアで生まれた


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父母共にコントラクターという親を持ったスティル。中でも父親は偉大な魔法使いとして名を馳せており、めったに家には帰らなかった

ずっと、一人

私はここにいるのに

私はここにはいない

誰も見ない。見つけない

私は、ここにいる

私は、ここにはいない

いつも見上げていた

漆黒の空を、眩い星を

いつの間に一人だったのだろう

いつから一人だったのだろう

ああ、そうか―

最初カラ一人ダッタンダ




たまの日に父は帰る

ドアを開けると息子が

自分を見上げている

赫い目で

自分は気にしない

ソファーにこしかける

それだけだ

スティルは父親がソファーに座っている姿しか見たことがない

知らないからだ

父親は息子が赫い目で見上げてくるのか見たことがない

知らないからだ

超えられない壁、無色透明の壁

親子と言う壁

この壁が崩れることはない

お互いが知ろうとしていないから

たとえいなくなっても、ずっと

それが、世界

ワタシハナニ

アナタハナニ

そうしてまたスティルは見送る

父親の背中を

同じく、赫い目で

一年にそれが三〜四回繰り返される

ただそれだけ

同じ日常

繰り返しの毎日

エリニアの、しかも偉大な魔法使いの息子と言うことで無理矢理魔法学校に入れられ、学びたくもない魔法を学んだ(ゆえにスティルはマジッククローやエネルギーボルトが使える)

スティルには、友人はいなかった

作ろうともしていないし、周りの者も近寄ろうとしなかった

スティルには夢はなかった

夢だ夢だといってもかなうはずのないただの想像

見えぬ鎖に縛られたものに夢など不必要なものだ

スティルには信頼できるものはなかった

周り全てを敵として置き換え、常に緊張感を持ち、人付き合いも全て避けた

故にスティルは、一人だった




転機の始まりは、スティルの嫌う灰色の空に訪れた

その日のスティルは不機嫌で、ドアがノックされたときそれを完全に無視した

しかし、無視しても無視してもドアはたたかれる

終にイライラして立ち上がり、乱暴にドアを開け、無作法な来訪者(この場合は一方的にスティルが悪いが)に赫い目を浴びせかける

しかし、そこには誰もいなかった

代わりにふわりと浮く、一通の手紙

hnmmmmm


ス「・・・・・」

真っ白の封筒に宛先はなし

裏を向けると、見たこともない太陽のような紋章の封が目に入った

送り主は、「アルカドノ陣師魔術協会」

紋章もさることながら、名前も聞いたことのない協会名だ

が、とりあえずあけ、中にざっと目を通す

最初に目に飛び込んできたのは「スティル・ルナフィード。アリアント大陸サンセットロードマガティアにて死亡」という一文だった

その下にはづらづらと死亡までの経路やら協会への背信行為やらその他諸々が所狭しと並べられていた


一応全てに目を通して、スティルは顔を上げる

その表情は、全く変わっていない、いつもの顔だ

父親が死んだからといったから何なのだ

元々居ていなかったような存在

いまさらその父が死んだからといって、悲しいとか、悔やむとかいう気持ちにはなれなかった

別にどうということではない

また当たり前の日常に戻るだけ

そう思ってスティルは手紙を暖炉に放り込み、寝室へと足を向けた

このときまだスティルは知らなかった

自分の一生涯の転機が、今なのだということを

はたして、スティルが寝室へと消えた後、手紙が燃え出した

ありえない色で

そう、「漆黒」の炎を出して手紙は燃え、灰の中へと、消える

幾重にも折り重なり、幾人もの役者が出る、一つの歯車

「運命」と言う名の、歯車

それらはもう、静かに動き出していた




スティルに手紙が届いた三日後

灰の空から涙のように溢れ落ちる粉雪はエリニアの森林に見事な雪化粧を施し、あたり一面を白銀の世界へと変えていた

スティルはこの日家に篭り、やりたくもない課題、魔法の基本となる魔術回路を開くための精神統一を行っていた

と、唐突にドアの外に気配を感じる

精神統一で感性が研ぎ澄まされていたからである

この日のスティルはそれほど不機嫌ではなかったため、已む無く精神統一を中止して立ち上がった

そこでドンドンとドアを叩く音。今から出るのに言葉など要らない。無言でそのままドアに近づき、ドアを開けようとして取っ手に手をかけたとき


メキッ


と音を立ててドアが盛り上がったかと思うと、とんでもないスピードでドアが内側へと吹き飛び、スティルの顔面にクリティカルヒットした

しかもそのパワーが半端ではなかったため足の踏ん張りがきかず、スティルは身体ごとフッ飛ばされ、ドアと共に床にへばりつく事となった

とそこへ

?「むむ?本当に留守か?」

とのんきな調子の声が響き、玄関に誰かが入ってきた

ス「てめ・・・」

半秒遅れてドアを蹴り退けスティルが立ち上がり、無礼千万な訪問者に鉄槌を与えるべく踊りかかる

があっさりかわされ、反対に腕をねじ上げられる

ス「ぐっ・・・」

反射的に相手を睨み付ける

そこにいたのは、何もかも黒い奴だった

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顔を見なければ男か女かもわからない顔立ち

黒いコートに黒いマント、黒い帽子に黒い靴に黒い髪、黒い目

この男こそが、スティルの運命の重要なピースの一つ

はたして男はこう名乗った


「三葉亭四迷広継」と―





広「俺は三葉亭四迷広継だ」

漆黒の男はそういった

スティルは半秒考えて

ス「知らん。勝手に人の家に突入するな、帰れ」

と赫い目を向けてすごむ

広「おお、恐い恐い。まるで底のないような恐ろしい目で見やがって、本当に子供か?」

ス「日本語がわからないのか?お前。帰れ」

もう一度すごみをきかせるが、これまたあっさりとスルー

広「いや用があってきたんで」

わざとらしく頭をかく。全く頭の上から足のつま先までうっとおしいやつだ、とスティルは感じる

しかし、用があってきている客人を追い返すわけにもいかず

ス「五秒以内でなら聞いてやる」

と返す

すると「遥か彼方アリアント大陸サンセットロードより貴方様に伝言を預かって参上したしだいでございます」と演技っぽく手を広げる

ス「・・・・・」

未練はなかった。どうでもいいはずだった

しかし、無視できない。胸が痛い。どうでもいい…はずなのに―

ス「…そのへんに座れ」

舌打ちして道を明ける。別に聞いたからといって何かが変わるわけでもない。だから聞いても問題はない

広「おお、ありがたいねえ」

といって目の前にあるソファーに座ろうとする

―と

いきなり足が止まった

広「―?」 

ソファーに微弱な魔力反応がある

広「―ヴェルディ」

?「拒絶、の式…かな」

広「っぽいよな」

そこへ前方から飛来する気配を感じて反射的にそれを受け止める

おれんじじゅーす、みかんのイラストが入ったペットボトルだった

広「おおさんきゅ」

前にいるソーダを持った生意気な子供に礼を言って、尋ねる

広「なあ、ルナフィードは…あー、お前の父はこのソファーに何か魔法をかけていたか?」

ス「何も」

即答で答える

広「…じゃお前がなんかしたか?」

ス「…何も」

微妙に反応が遅い

広「何をした?」

ス「特に何も。ただ座って欲しくなかっただけ」

広「…お前、どっかで陣師について学んだのか?」

ス「なにそれ」

広「…;いやなんでもない;」

ス「そうか」

ス「用件を」

広「ああ、そうだったな。えっと―」

と手前の椅子を引き寄せ座り、話そうとしたとき


バキィッ


非常に嫌な音を立てて椅子の肢が四本とも折れ、見事転倒

広「・・・・・・・・・」

ヒクヒクと眉間に皺を寄せつつも立ちあがり、代わりの椅子を探すが、どれもこうなっている可能性も軽視できない。仕方なしと床に座る

この間もスティルは全く笑っていない。ただ一言「―で?」と続ける

広「ん…ああ。まずラバース・エリア・ワールドとコントラクターから説明するか」

ス「魂の王の事か?」

広「へっ?知ってんの?」

ス「母親がそうだった…らしい」

広「あ、そうなの」

それならと納得

広「夫婦揃って契約者か。んでお母様は今何処で活動を?」

ス「死んだ」

広「(´゚ω゚).:゚*ブッ 」

全く、常人なら一歩踏みとどまるところを兵器で踏み出すガキである

広「そ、そう…なのか」

ス「ああ」

広「ん…ならまあ話は早い。自己紹介しておくか…ヴェルディ」

?「ん」

ヴィルデリア(以下ヴ)「私は「白楼の大抄輪」ヴィルデリア・F(フラティッシュ)・ブルーエルト。こっちは契約者「黒衣の埋葬者」三葉亭四迷広継」

ス「黒衣の埋葬者」ねえ…」

まんまだな、と思う

広「まず志望の経路の説明をだな…」

ス「手紙でよんだ」

広「ああ…協会から来ていたのか。ってか俺が出したんだった」

ス「ようは、禁呪を使ったわけだろう?」

広「正確には「使おうとした」だ。寸前でとめたからな」

ス「そうか」

広「奴…つまりルナにはライバル…といっても一方的に感じていただけだが…がいた」

広「そいつはいわゆる天才ってヤツで、あいつがどうこうして勝てるレベルじゃないほどだった」

広「でも努力家のあいつは諦めなかった。必死で勉強して追いつこうとした」

ス(努力家…ねえ)

広「しかしルナが1進んだときにはそいつはもう5は進んでいた。そうしてルナが勝てないと悟ったとき…あれを発動させたんだろう」

ス「あれって?」

広「奪込」…ヴァストローデって禁呪だ。町ひとつの魂の力をすべて飲み込んで、自身への力へ変換させる陣だ」

ス「ヴァストローデ…」

広「本当言うと気づいてやれなかった俺たちも悪かった。気づいたときにはもう止める術はなくて…発動をやめさせるには殺すしかなかった」

ス「そうか」

広「ライバルを困らせ…いや、絶望させたかったのかもしれない。あるいはその力でそいつに立ち向かいたかったのかもしれない。しかし、掟は掟。…罪には罰なんだ」

ス「ああ」

広「ルナからの伝言だが…」

ス「ん」

広「我が息子スティル・ガーフィード。お前が俺のようにならぬようここに言葉として残す。」

ス「・・・」

広「絶望するな、前を見ろ。世界を信じろ、頼れるものを見つけよ」

そこで言葉を切る

ス「・・・それだけか?」

広「ああ」



ス(世界を信じろだって…?)

(この悪意と喧騒に満ちた腐ったこの世界を?)

(信じる?)

(何故?)

(信じなくなったのは誰のせいだ?)

(独りになったのは誰のせいだ?)

(夢を、希望を持たなくなったのは誰のせいだ?)

(―お前のせいじゃないのか?)

(お前が放っておいたから)

(お前が構わなかったから)

(お前が何も知れやらなかったから)


お前が、オ前ガ、オマエ、が―


全テ、オ前のセイジャナイノカ?




ヴ「…一つ問おう」

ビクッ、と身体をふるわせる。相当考え込んでいたらしい

ヴ「君は何色が好き?」

ス「―…?」

ヴ「好きな色を聞いてるんだ」

ス「黒」

ヴ「何故?」

ス「黒は全てを飲み込む色だから。白を混ぜない限り、黒は全ての色を飲み込む。常に黒きに染まる独りの存在―あんたがうらやましいよ」

広「そうかい」

途端に声調ががらりと変わる。穏やかでのほほんとした声ではなく、低くて凍りつくような声だった

ス「…!」

思わず気圧される

広「お前は…お前はそうやって逃げてきたんじゃないのか?」

ス「…?」

広「黒がうらやましいだって?馬鹿馬鹿しい。黒は飲み込む色なんかじゃねえ。逃げた者の象徴の色だ」

ス「逃げ…た?」

広「そうだ。黒に隠れていれば全て見えなくなる。そうやって全てから逃げ出してるんだ。世界からも、人からも、何もかもから」

広「では問うが、金は本当にルナから何も受けてていなかったのか?」

広「よく考えろ。ルナは本当に君に苦痛を与えたか?」

広「思い出せ、ルナは君に、夢を持つなといったか?君の自由を束縛したか?君のすべてを奪ったのか?違うだろう。君がそう考えていただけのことだ」

ス「だまれ!」

スティルは叫んだ。絶えられぬ思い。心をこじあけられるような感触

ス「私は…私はあいつから何ももらってなどいない!」

広「・・・・・・・」

広継が口を噤む。悲しそうな、哀れむような目でスティルを見ている

広「そうだ、ルナは君に何も与えていない。しかし、何も奪っていないのだよ」

広「君はそうやって、何もかもから逃げているんだ、哀れな少年、スティル・ガーフィード。他人の愛や思いやりを感じれずに勝手にそれを捨てて、世間や世界のせいにする。一匹狼といえば聞こえはいいが、それはただの孤独なひとりの人間なんだよ…」

ス「・・・・・・・」

広「ルナは君にはすべてを見てほしかったんだと俺は思う。この非情な世界を。見て、知って、そこで生きてほしかったんだ。この世界で。黒きにも白きにも赤きにも青きにも染まる、この世界で。自分ができなかったことを」

広「だから放っておいた。この世界を理解させるために。それを君が束縛ととるのは無理もない。それも、この世界の非情の一つだから」

そういうと立ち上がり、玄関へと向かう

そこでふり向き、こう言う

広「俺は蒼が好きだ。蒼はすべてを飲み込む色だ。正も悪も、蒼はすべてをうけいれ、そのままの姿を映し出させる。かつて王の一人がこう言ったことがある。「蒼として生きる者はこの掌に入るビー玉より数は少ないが、その者はこの世の真理を最もよく理解している者だ」と。だから信じるものを見つけろスティル・ガーフィード。そこには必ず何かがある。もう一人だと思うのはやめろ。その赤い目で、底のないような目で全てを嫌うのはやめろ。その運命が不本意であるなら、それを打ち破れ。否定しろ。切り捨てて、自分で創造するんだ。自分の未来を。そして運命を」

広「俺のようにはなるな。全てを捨てて逃げた俺のように。俺も信じよう。君が「蒼」に染まることを。信じて、待っていよう―」

そういい残して玄関を出る。と同時に足元に一つの足型を残して、黒い一人の契約者は、消えた

ス「・・・・・・・」

スティルは困惑していた

雪の日の黒い訪問者

実父の思いを伝えるためにきた契約者

この無限に広がる夜空の下で

この永遠に澄み切った青空の下で

この非情に満ちた灰空の下で

生きろといった、知れといった、一人の、男

ふと机を見る。そこにはカラのオレンジジュースのビンと、スティルが半分残したハズなのにいつの間にかカラになっているソーダのビン

ス「いつの間に飲んだんだよ、おい―」

スティルはこの日、初めて笑った

愛想ではなく、心から

雪の降るこの空の下で―




黒い男は歩く。歩を緩めずに。白銀の世界を、歩く

広「へぇっくし!!」

ヴ「大丈夫…?」

広「ああ」

ヴ「まったく…本当にかっこつけなんだから、広継は…あんなとこで別に消えなくてもいいじゃない」

広「いやだってあそこで消えたらかっこいいじゃん」

ヴ「理解できないわね…もぅ、意地っ張りなんだから。ろくにテレポートもできないのに慣れない事して」

広「ツンデレよりましさぁ〜」

ヴ「ツンデレじゃないってば!」

広「はいはいヴィルデリア様〜」

ヴ「茶化さないでよ広継〜」

広「はははw君をからかうのは面白いな〜慣れない男王のフリご苦労様w」

ヴ「全く…貴方のような変人の契約者は初めてよ;」

広「そりゃ光栄なこって」

ヴ「ほめてないんだけど…」

広「いやそれは最高の褒め言葉だわ」

ヴ「むきー!そうやって人をいつも馬鹿にしてー!!」

広「人ならざるものが何を言うか」

ヴ「それが屁理屈だっていってるのー!!」

わあわあと盛り上がりながら、黒が白銀の世界を歩いてゆく。やがてそのちっぽけな黒は一面の白に飲まれ、姿を消した




前編終了です!ここまで読んでくれた人お疲れ様でした!さてさて浄化が12月に完成させた私とアルフィナの契約物語「永遠にニジノカナタニヒカルソウキュウノヒトミ」がついにここに執筆されました。待ってくれていた方もそうでなかった方も楽しんで読んで頂けたでしょうか?後編執筆はまだ未定ですが、なるべくはやくやるようにとのお達しなので、できる限り早めにやろうと思います。では皆様ごきげんよう〜

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