Maple Strategy

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第三十章 過去の惨劇

MapleStrategy 30 chapter




ゴォォォォォォォォォォ

山を囲うようにして建つ、大きな屋敷が燃えている

・・・

・・・・・・ああ

これは何だろう

よく思い出せない

でも心にははっきりと残っている

これは何なのだろう

ああ、わかった。これは、そうか

あの日の出来事か―




俺にはよくわからなかった

「彼」がどんな存在なのかなんて

家族は、いや我が一族の者は「彼」のことを「主」と呼び、彼もまた、幼い頃からそれを良しとしていた

思えば、彼は昔からおかしかったかもしれない

いや、おかしいというのは間違いか。狂気に憑かれていたと言った方が正しいであろう

ただ一度だけ、俺は彼の方から話し掛けてもらえたことがある

彼は尊くて、高貴な存在なのだと、そうきかされていた

それだけで彼を受け入れろというのは無理な話だが、俺は不思議と彼が尊い存在だということには同感だった

自分が信じて、ついていった、ただ一人の契約者に、雰囲気というか、気配が似ていたからだ

俺が戦いに敗れ、一族をまとめて山奥の故郷に帰り、勢力の復帰を図っていた頃、彼はぶらりと現れた

取り次いだのは俺だったが、当時まだ子供のような彼に鼻で笑われ、「貴様の父を呼べ」と言って一蹴された

それから彼はここに住み着く様になった

そんな彼が俺に質問した最初で最後の言葉

「お前はこの世界をどう思う」と

その吐き出された言葉は毒よりも酷く、辺りに臭気を撒き散らすように冷たい一言だった

俺はその場から動かず「おかしい」と、それだけ言った

彼は俺のその発言に満足したように頷いて、俺の前から去った

それから幾年の月日がたったであろうか

勢力を取り戻しつつあった一族の元に、一人の男が現れた

その男は彼を引き取りにきたという

その言葉に一族は騒然となった

彼は俺にあの質問をしてからの何年かで、我が一族は彼を神のように扱うようになり、どんどん上へと押し立てていった

俺はその言葉に踊らされているように見える彼に眉をひそめつつ、彼を神にしようとしている一族が情けなかった

そこまでの存在である、神を奪おうとしている男が一族の前に現れて、一族が素直に彼を渡すはずが無い

一族は男を糾弾し、口汚い言葉を浴びせて追い返そうとした

それでもがんとして退かない男は、何度も一族にこう言った

「今ならまだ間に合う、俺は彼を迎えにきたのだ」と

もし一族がそれを「時間的な余裕」ではなく「自分達の命の余裕」だと理解していたならば結果は違ったかもしれない

だが一族はその言葉を受け入れようとはせず、1時間に渡り男への糾弾は続いた

ちょうど1時間、あるいはもう少しだったかもしれないが、今までどんな薄汚い言葉にも反応せずに黙って聞いていた男が、急に大きく口を開いた

「ああ、良いのですか?」と

そして、一族がまだその言葉を理解しないうちに、屋敷の東階段の上から、「良い」という一言が響き渡った

正確には、東塔の最上階、「彼」の部屋の奥から

その言葉に一族が驚愕し、その意味を問おうと口を半分ほど開いた

次の瞬間





一族が微かに灯していた炎のどれよりも暗く深い、深緑の閃光が爆発した





そのまま何も言えぬまま、目の前にいた一族の一人から悲鳴が上がり、半秒遅れて首がずり落ち、それは断末魔へと変わる

そして次々に深緑の炎が一族の者を飲み込み、わずか数秒で屋敷のロビーは地獄と化した

俺は初期位置から一歩も動かずに、その惨状を見ていた

やがて俺が最後の一人になったのか、男がこちらへと向き、ゆっくりとした足取りで近づいてきた

あの時いくらでも逃げるなり対抗するなりはできただろうが、何故か「そうしてはいけない」ような気持ちになり、俺はただその場に立ち尽くしていた

男がすぐそばまで歩を進め、剣を振りかぶる

そして、振り下ろされようとしたその時

今度は上階の方で爆発が起こり、閃光が迸った

男は数秒俺に剣を振り上げたままで静止していたが、やがてすべてを理解したのか剣を捨て、弓に持ち替えて片膝をつき、上階からの来訪者を待つ

―コッ

「それ」はすぐにやってきた

上階を火の海に変えて、この世の悪意と瘴気をすべて纏い、撒き散らしながら

男が彼の名を呼ぶ

「第二代目主催者、エルフィリニオ・エールナイツ様」

「―ああ」

エールナイツと呼ばれた男はまるで窮屈な檻を脱したような顔をして、ゆっくりと階段を下りながら、こちらへと向かってくる

エ「重臣「魔弾の射手」ヴァルクド・F・ベガか。父が世話になった」

ヴ「は、勿体無き御言葉。この「魔弾の射手」、貴方に全力でお供する所存です」

エ「ああ、よろしい。参ろうか。いい加減ここの空気にはうんざりしていた」

ヴ「は、しかしまだ生存者がおります。命さえ下してくだされば、ここで楽に致しますが」

エ「っは、久方ぶりとはいえ、旧知の友ではないのか、お前らは。なあ、ウォリアーナイト」

ヴ「は!?こいつがハル!?御冗談を、あいつはもっと殺気に満ち溢れた男ですよ。このような平凡な者では・・・」

エ「ふん、父の代とは違うのだ。この数十年で、ウォリアーナイトは随分と丸くなったのだろう。まあしかし、父上が自分の記憶の入ったメモリーを残してくださらなければ、俺でも気づけなかったやも知れん」

ハル・ウォリアーナイト(作中で用いられている「アスラ」のアを使用します「・・・ヴァルクド、本当にお前なのか」

ヴ「・・・確かに、この声は聞き間違いも無い。我が友ハル・ウォリアーナイトよ」

エ「・・・さて、ウォリアーナイトよ。俺が何故この一族の中でお前だけを残したと思う?」

燃え盛る屋敷の中で、彼はまた、あのときのように臭気を撒き散らすような冷たい声で言った

自分が首を振るのを見て、ふんと鼻を鳴らす

エ「お前がただ一人、俺の問いの本当の答えを言ったからだ。お前の一族のクズ共はやれ炎の揺らぎの絶対王政がどうだの、我々の時代を取り戻すべきだのと、御機嫌取りの不愉快な答え方をしたのに対してただ一人お前だけが「おかしい」と言った」

エ「ま、もっともこれは父上にお前がついていっていたからかもしれんがな」

エ「さあて、ウォリアーナイトよ。ここでお前は一人選択をしなければならん。もう気づいているであろう、簡単なものだ」

エ「俺についてくるのか?」

重く響き渡ったその言葉

だが俺は迷いはしなかった。彼がどれだけ千台の意向から離れていようと、俺は既にこの人達についていくと、何十年も前に先代に誓ったのだから

ア「神速の討手」ハル・ウォリアーナイト、「虚の色林」イルプス・B・イゴールズ、主催者にお供します」

エ「ああ、そうか」

ア「そして、この数年間、行動をともにしていたのにもかかわらず配慮が無かったことをお許しください」

エ「はっ、旧知の友でもみまちがえて殺そうとしたくらいに変わっているんだ。まして、父上の顔の面影が全く無い俺に気づいていたという方がおかしいわ」

ア「・・・左様でございますか」

エ「ああ、そうだとも。さて、もうここには何のようも無い。行くぞ、ウォリアーナイト、ヴァルクド」

ヴ、ア「はっ」

山道を歩きながら焼け行く屋敷をチラリと振り返る。それを見たエールナイツが、まったくどうでもよさそうに慰めの言葉を発する

エ「無用の長物とはいえ、お前の親族だったのだ。すまないな」

エ「は、主催者が不必要と判断された時点で、彼奴等の未来は決まっておりましたでしょう。臣下にわざわざ情けの言葉など無用です」

エ「ふん、左様か」

山道を歩き、小枝を踏みしめながら、彼はやはり無気味に笑った




それから間もなく、彼はエクスフォード・フィリスと契約し、「悪魔の手甲」を名乗る」

そして、今


「我がプログラムが炎の揺らぎに何処まで通じるのか楽しみだ」と、不思議な青年が

「私のような惰弱な者を必要と仰るのですか」と控えめな青年が

「貴方の目的、是非終幕を見てみたい」と不気味な青年が

そして大陸一つを丸ごと照らせるような炎の渦の王、使徒達が

一つの組織に所属の元、暗躍している

彼らの名は、そう


「破滅希望者達」


今日も、明日もまた、無気味な笑いが彼の口から漏れる


しかしいつまでも俺は―





ふー、いかがだったでしょうか。復帰第二章目は。一応三十という一つの区切り目まできたのですがね。今回は現重臣アスラ(ハル・ウォリアーナイト)の視点から彼とエールナイツの関係を描いて見ました。育てさせておいて後で皆殺しとは、なんともエールナイツらしい魔王っぷりですね。ん?おかしいところがある?ああ、ハルの契約名ですか?あれは今章では「神速の討手」になってますね。彼の本当の契約ネームは「楽園の剣先」です。しかしこの頃はまだ「神速」の称号を彼が持っていたのです。え?何?違う?え、最後のほうの青年達がアスラやヴァルクドにはあてはまらないし人数が多いだって?ふはは・・・それは、まあお楽しみでwではまた、来章も皆さんに楽しんでいただけることを願いつつ ノシ
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